甲状腺の疾患は10人に1人が見つかるといわれ、まれな病気ではありません。女性は男性に比べて10倍ほど多く、妊娠可能な女性にしばしば発症します。最近はわずかな甲状腺機能異常でも不妊や流早産への関与が明らかとなっています。
妊娠すると甲状腺ホルモンは妊娠する前の約1.5倍必要になります。
妊娠中の甲状腺ホルモンは
①胎盤を通じて赤ちゃんに運ばれ、赤ちゃんの成長発達に必要とされる
②妊娠の経過を順調にする。
という2つの大きな役割があります。
甲状腺機能異常があると、不妊や流早産のリスクが高くなることがわかっています。
バセドウ病患者の52%、橋本病患者の47%が不妊症。不育症の6%に甲状腺機能異常があるといわれます。
不妊症の20%に甲状腺自己抗体陽性、10%に潜在性甲状腺機能低下があり、治療を行うことがあります。
バセドウ病とは
甲状腺のホルモンが過剰に作られてしまう自己免疫疾患です。
バセドウ病の治療
①抗甲状腺薬・・・・第一選択
うまくいけば2年くらいで緩解する。再燃、再発、長期治療もある
②手術・・・ほかの治療を選択できない場合。
全身麻酔のリスクがある、術後機能低下に対する補充療法が一生涯必要。
バセドウ病だってわかったらどうしたらいい?
・近い将来妊娠の予定がない
→まずはメルカゾールで治療開始!妊娠希望の時点でコントロール良好ならプロパジールに変更(催奇形性を回避)
妊娠16週からはメルカゾールに戻す(副作用の回避)
・妊娠希望の場合
副作用に注意しつつ、プロパジールで治療を開始
重症な場合や、プロパジール・ヨウ化カリウムで治療困難な場合は妊娠を待って、メルカゾールで治療。場合によっては手術
もしメルカゾールを飲んでいるときに妊娠がわかったら??
16週未満→プロパジールまたはヨウ化カリウムに変更
16週以降→メルカゾールのまま継続(ただし妊娠初期のメルカゾール内服におけるリスクの可能性を説明)
バセドウ病の薬飲んでいても授乳していい??
プロパジール:300mg/日まで
メルカゾール:10mg/日まで
それ以外なら内服後6時間開けてその間はミルクで
ヨウ化カリウムは避けたほうがいい
橋本病とは
甲状腺に炎症・破壊を起こす自己抗体によって、甲状腺ホルモンが作られなくなる自己免疫疾患です。
橋本病合併妊娠のリスク
橋本病事態に、むくみ、体重増加、妊娠高血圧症行軍、耐糖能異常(妊娠糖尿病)、不妊・流早産、産後甲状腺炎の発症リスクがあります。TSHが高いと、自己抗体が陰性でも不妊・流早産の増加がみられます。
不妊治療をしている人への甲状腺ホルモン補充(チラーヂンS)
・甲状腺自己抗体陽性:チラーヂン50μgから(少しでも早く効果を出したい)
・甲状腺自己抗体陰性・TSH2.5~4.9:チラーヂン25μgから開始
・甲状腺自己抗体陰性でTSH5以上:チラーヂン50μgから開始
妊娠後は4週ごとにTSHの数値を見て補充量を決める。産後は2~3か月ごとにフォローし、容量を調節
出産後
一般妊婦の約5%(20人に1人)で出産後に甲状腺機能異常症が起こるとされています。
特に検査を受けたこと方がいい人
・産後の肥立ちが悪い人
・橋本病と診断されたことがある人(治療してるかどうかにかかわらず)
・バセドウ病の治療歴がある人
ヨウ素の甲状腺への影響
ヨウ素を含む、市販のうがい薬は注意が必要!母乳へ移行して、子供の甲状腺機能低下をきたす可能性があるので、特に授乳中はさけるといい
1日のヨード接種推奨量:妊婦240μg、授乳婦270μg
のどぬーるスプレー:1噴霧で1300μg
イソジンガーグル:1日3回のうがいで5000μg
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